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お金より大切なもの

  • Hiromi
  • 2021年12月10日
  • 読了時間: 3分

先月 27 日、台湾のアカデミー賞とされる「金馬奨」で、香港の民主化運動を描いた『時代革命』という作品が最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しました。この作品は、舞台となった香港はもちろん、中国本土では上映禁止となっていました。受賞直後に中国の SNS で大変話題になったものの、10 分後には関連記事がすべて削除されてしまいました。莫大な資金がないと成り立たないエンターテインメント業界において、あえてこの作品を最優秀賞に選んだ台湾の映画人に、心から敬意を表したいと思います。

コロナ禍をきっかけに、今、世界中で秩序の破壊が起こっています。これまで自由や人権を標榜してきた国や組織が、それらを弾圧する勢力に対して口をつぐんでいるだけでなく、裏ではそれに加担しているという内幕も明るみに出つつあります。その典型的な例が、IOC (国際オリンピック委員会) でしょう。先日、中国の有名な女子テニスプレーヤーが突然消息不明になったことに対して、世界中から中国はオリンピック開催国としてふさわしくないと抗議が殺到しました。ところが、IOC の会長は本人とのオンライン通話の映像を公開し、事件をなかったことにしようとしました。一方、女子テニス協会 (WTA) はいち早く同国での大会を中止しました。この決断によってかなりの経済的損失が生じるにもかかわらず、WTA がお金よりも選手の自由と人権を優先したことに、世界中から称賛の声が寄せられました。

米国のプロバスケットボール選手のエネス・カンター選手も、この WTA の英断を高く評価しました。同氏はかねてより中国の人権侵害を批判し、北京オリンピックボイコットを呼びかけていました。しかし、NBA (ナショナル・バスケットボール・アソシエーション) にとって中国は巨大な市場であり、選手のこうした発言に神経をとがらせています。おそらくカンター選手よりも格上の NBA の超大物スターであるレブロン・ジェームズ選手は、人種差別問題に対する政治的パフォーマンスでも有名ですが、香港デモに関して軽はずみな批判は慎むべきだとし、NBA と同調の姿勢を貫いています。レブロン選手の発言は、中国で大絶賛され、米国では大バッシングを浴びました。しかし、最終的にファンは両選手のどちらを称賛するでしょうか?答えは明らかでしょう。

以上は他国で起きていることですが、実は今、最も岐路に立たされているのが足下の日本です。IOC や NBA がこうした態度を取るのは、正しい行動をするのに「お金」が大きな足かせになっているからです。そのためにますます主義・主張と行動が一致しないダブルスタンダードに陥っていきます。その姿に人々は嫌悪感を覚え、やがて心が離れていきます。そしてとうとうお金にも見放されてしまうのは、もう時間の問題です。今、日本が本当の国益というものを考えるなら、お金よりももっと大切なものに一刻も早く気づいて行動すべきでしょう。

 
 
 

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